守っていますか?最低賃金~しっかりチェック!~
最低賃金(地域別最低賃金)が令和5年度10月より改定されています(※)。最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低限度を定め、会社(使用者)に対し、定められた最低賃金額以上の賃金を支払う義務を課す制度になります。今回は、最低賃金の種類やその適用を受ける労働者、最低賃金額以上が支払われているかの確認方法などについて詳しく解説していきます。
(※)地域別最低賃金の発効日は各都道府県によって異なります。発効年月日の詳細に関しましては、こちらの厚生労働省ホームページ 地域別最低賃金の全国一覧(令和5年度地域別最低賃金改定状況)をご確認ください。
最低賃金の種類
最低賃金には、「地域別最低賃金」および「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。一般的に最低賃金と呼ばれるのは、すべての労働者と会社(使用者)に対して適用される「地域別最低賃金」を指します。地域別最低賃金および特定(産業別)最低賃金の両方が同時に適用される場合は、会社(使用者)はいずれか高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとされています。
最低賃金が適用される労働者の範囲
「地域別最低賃金」は、産業や職種に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者と会社(使用者)に対して適用されます。一方、「特定(産業別)最低賃金」は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその会社(使用者)に対して適用されます(ただし、18歳未満または65歳以上の者、雇入れ後一定期間未満の技能習得中の者、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する者を除きます)。また、特定(地域別)最低賃金の額は、その適用を受ける会社(使用者)の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金の額を上回る額でなければならないとされています。なお、派遣労働者については、「派遣先」の最低賃金が適用されます。
最低賃金の減額の特例
一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会が限られてしまうおそれがあるため、以下の労働者については、会社(使用者)が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、個別に最低賃金の減額の特例が認められています。
① 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方 |
② 試の使用期間中の方 |
③ 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方 |
④ 軽易な業務に従事する方 |
⑤ 断続的労働に従事する方 |
なお、最低賃金の減額の特例許可を受けようとする使用者は、最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。
➡参考リンク:厚生労働省ホームページ 最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領
最低賃金の対象となる賃金
➡最低賃金の規定を適用する場合、次にあげる賃金を計算の基礎に算入せず、最低賃金額以上であるかどうかを確認します。
① 臨時に支払われる賃金 |
② 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) |
③ 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金 |
④ 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金 |
⑤ 22時から翌日5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分 |
⑥ 精皆勤手当、通勤手当および家族手当 |
最低賃金額以上であるかの確認方法
賃金額が最低賃金額以上となっているかどうかは、賃金を時間あたりの賃金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較して確認します。具体的には、最低賃金の対象となる賃金額と、適用される最低賃金額を以下の方法で比較して判断します。
【賃金形態】 | 【比較方法】 |
① 時間給制 | 時間給≧最低賃金額(時間額) |
② 日給制 | 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額) ※ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額) |
③ 月給制 | 月給÷1か月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額) |
④ 出来高払制その他請負制によって定められた賃金 | 出来高払制その他請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間あたりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較する |
⑤ 上記①~④の組み合わせの場合 | 例えば、基本給が日給制で、各種手当が月給制などの場合、それぞれ上記②と③の計算方法により時間給に換算し、それらを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較して判断します。 |
➡月給制の場合の確認方法
【設例】 | |
11月給与(月給制) | ・基本給:180,000円 ・役職手当:20,000円 ・時間外手当:30,000円 ・通勤手当:10,000円 ・合計:240,000円 |
1か月平均所定労働時間 | ・160時間 |
神奈川県の最低賃金 | ・1,112円 (令和5年10月現在) |
【最低賃金額との比較手順】 | |
【手順①】 | ・支給する賃金額から、最低賃金の対象とならない賃金(時間外手当と通勤手当)を差し引きます。 ➡240,000円ー(30,000円+10,000円)=200,000円 |
【手順②】 | ・上記①の金額を時間給に換算します。 ➡200,000円÷160時間=1,250円 |
【手順③】 | ・上記②の金額と最低賃金額を比較します。 ➡1,250円≧1,112円(最低賃金額以上) |
最低賃金法における罰則規定
支払った賃金が最低賃金額未満であった場合には、実際に支払った賃金と、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。差額を支払わなかった場合、会社(使用者)に対して、以下の罰則が定められています(最低賃金法第9条、第40条)。
① 地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合 | ➡50万円以下の罰金 |
② 特定(産業別)最低賃金額以上の賃金を支払わない場合 | ➡30万円以下の罰金 |
最低賃金法に定める最低賃金の規定は強行法規になりますので、たとえ労働者が同意したとしても、それより低い賃金での契約は認められません。最低賃金より低い賃金で契約したとしても、法律によって無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。また、最低賃金の規定は当然に外国人労働者に対しても適用されます。「外国人労働者に最低賃金のルールは関係ないでんでしょ?」というのは大きな間違いです。最低賃金額以上の賃金が支払われているかどうかを常にチェックすることが大切です!