インターナショナルスクールでの外国人雇用について
インターナショナルスクールやプリスクール、バイリンガル幼児園で外国人の方を採用する場合の就労ビザ(在留資格)の申請について、「どの就労ビザを取得すればよいのかよく分からない。」、「日本語能力はどの程度のレベルが求められるのか?」といったご質問をいただきました。
学校や語学スクールで、講師や教員として就労する場合に取得できる就労ビザ(在留資格)については、その境界線が非常に分かりづらい部分がありますので、今回は詳しく解説していきたいと思います。
目次
教育機関による就労ビザの違い
教師にも、「先生」や「講師」、または「教授」などさまざまな呼び名がありますが、就労ビザ(在留資格)に関しても、外国人の方が働く教育機関によって取得できるビザが異なり、明確に区分されていますので、申請の際には注意が必要になります。外国人教師の就労ビザとして、「教授」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」の3つに分類されますが、今回は、インターナショナルスクールで働く際の就労ビザとして、「教育」と「技術・人文知識・国際業務」にフォーカスを当てて解説していきます。
なお、大学、短期大学、高等専門学校勤務の場合は「教授」ビザを取得します。また、「留学」ビザや「家族滞在」ビザの許可を受けていれば、「資格外活動許可」を得ることで週28時間を限度に働くことができますが、今回は語学教師の方が取得できる在留資格である「教育」と「技術・人文知識・国際業務」に絞って解説しますので、資格外活動許可については割愛させていただきます。
在留資格「教育」について
外国人の方が働く教育機関が、日本の小学校、中学校、高等学校や学校法人の場合に取得可能な就労ビザが「教育」になります。後に解説しますが、一般の企業等で、教育機関以外の団体が、事業として営む語学学校などの講師として働く場合は、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得する必要があります。
(1)教育ビザの該当性
・入管法では、教育ビザの活動範囲を以下のように規定しています。
➡「日本の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校又は各種学校もしくは設備及び編成に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動。」
(2)教育ビザの対象となる学校
・「教育」ビザは、次のような教育機関で、語学教育もしくはその他の教育をする教員に対して許可されます。
(a)小学校 |
(b)中学校 |
(c)高等学校 |
(d)義務教育学校 |
(e)中等教育学校 |
(f)特別支援学校 |
(g)専修学校 |
(h)各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動 |
インターナショナルスクールにおける教育ビザ取得の注意点
外国人児童を対象に、外国語で授業を行うインターナショナルスクールでも教育ビザが許可されます。また教育ビザは、小学校以上の教育機関の教員に認められる就労ビザになりますが、一部のインターナショナルスクールに属するプリスクールや保育園など、1歳~6歳までの未就学児を対象としたスクールでも教育ビザが許可されることがあります。ただし、以下の点に注意する必要があります。
■インターナショナルスクールにおける教育ビザ取得における注意点■ | |
(1)教育機関での就業内容について | ➡プリスクールや、バイリンガル保育園での就業内容が、「語学教育」を目的としていることが必須になります。ですので、「幼児教育」がメインなっていたり、寝かしつけやおむつ交換などが業務に含まれるか、時間的な割合等が大きい場合、教育ビザの取得が難しくなってきます。プリスクールでの就業内容が以下のような内容であれば、教育ビザの取得の可能性があります。 (a)バイリンガル講師 (b)英語カードなどの教材作成 (c)外国人保護者に対するフォロー(連絡事項等を英語で伝える等) (d)入園手引き、行事案内の翻訳 (e)避難対応、病児連絡、保護者対応 ※上記(a)~(e)について、「実務家のための100の実践事例で分かる入管手続き」より引用 |
(2)対象生徒の国籍 | ➡ここでいうインターナショナルスクール、プリスクールは外国籍の生徒が対象になります。日本人生徒が対象となる場合には、「教育ビザ」ではなく「技術・人文知識・国際業務ビザ」を申請することになります。 |
インターナショナルスクールで、外国人が保育士や保育の補助を行う者として勤務する場合、就労ビザは取得できるのでしょうか?
➡原則、就労ビザを取得することができません。永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者、定住者などの身分に基づく在留資格を許可されている人であれば働くことができます。また、留学ビザや家族滞在ビザを持っている外国人の方が、「資格外活動許可」を得て、週28時間以内のアルバイトとして働くことは可能です。
インターナショナルスクールにおける教育ビザ取得のための要件
(1)インターナショナルスクールで勤務する場合、次のいずれかに該当している必要があります。
■要件(次の(a)~(c)のいずれか)■ | ■ポイント■ |
(a)大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けていること | ➡「大学」には、日本の大学のほか、「外国の大学」も含まれます |
(b)行おうとする教育に必要な技術又は知識に係る科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了したこと | ➡「日本の専修学校の専門課程を修了」に関する要件については、「専門士」または「高度専門士」と称することができることになります。 |
(c)行おうとする教育に係る免許を有していること | ➡日本の免許のほか外国の免許も含まれます |
➡外国人の方がインターナショナルスクールで働く場合であっても、教育ビザを取得するには、上記(a)~(c)のいずれかの要件に加えて、日本人と同等額以上の報酬を受ける必要があります。 |
➡上記要件は、外国籍の園児・児童教育、初等教育または中等教育を外国語によって行うインターナショナルスクールにおいて「教育ビザ」を取得する要件なります。一般の小学校、中学校、高等学校等において外国人の方が働く際に「教育ビザ」を取得する要件は、上記要件とは異なります。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」について
インターナショナルスクールについては学校教育法上、明確な定義はありませんが、「主に英語により授業が行われ、外国人児童・生徒を対象として、初等教育または中等教育を行う教育施設」を一般的なインターナショナルスクールとするのが文部科学省の見解のようです。
➡つまり、先に紹介した「教育ビザ」の取得が認められるインターナショナルスクールは、外国籍の児童・生徒が対象です。日本人の児童・生徒が対象の場合には、「教育ビザ」ではなく「技術・人文知識・国際業務ビザ」を申請することになります。
この「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動の具体例としては、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等になります。
インターナショナルスクールにおける技術・人文知識・国際業務ビザ取得の注意点
(1)インターナショナルスクールの形態
・ここでもう一度インターナショナルスクールの形態について確認します。インターナショナルスクールの形態によって、取得できる就労ビザが異なる点を再度確認してください。
■インターナショナルスクールの形態■ | ■取得できる就労ビザの種類■ |
(a)日本で生活する外国人の子供のみを対象に教育を実施するインターナショナルスクール | ➡教育ビザ ※教育ビザは通常小学校以上の教員にのみにしか認められませんが、一定の条件を満たすプリスクールの教員についても教育ビザが認められる場合があります。 |
(b)日本人児童・生徒を対象として、英語教育に重点を置いたカリキュラムを実施しているインターナショナルスクール | ➡技術・人文知識・国際業務ビザ |
(2)インターナショナルスクールにおける「技術・人文知識・国際業務ビザ」取得の際の注意点
・インターナショナルスクールの形態が上記図表の(b)に該当する場合、取得できる就労ビザの種類が「技術・人文知識・国際業務ビザ」になることはご確認いただけたと思います。ただし、この場合でも技術・人文知識・国際業務ビザが認められるかどうかの判断には注意が必要です。つまり、
(b)の形態のインターナショナルスクールの場合、外国人の方が「外国語教師」、「幼児教育者」どちらの業務でインターナショナルスクールに雇用されているのかが重要になります。
(ⅰ)「外国語教師」として雇用される場合 | ➡1日の業務の中で、外国語教師としての業務が大半を占めていなければなりません。授業やレッスンが1日に1~2時間程度で、他の時間は生徒の世話や園児の見守りをしていたり、他の授業をを担当するような場合、技術・人文知識・国際業務ビザが許可されない可能性が高いです。 |
(ⅱ)「幼児教育者」の立場で雇用される場合 | ➡幼児教育活動に従事している場合は、大学の専攻や実務経験が幼児教育に関連するものでなければなりません。 |
技術・人文知識・国際業務ビザ取得の際に求められる日本語能力レベルについてですが、技術・人文知識・国際業務ビザ申請の際には、日本語能力を必須としていません。ただし、実際の審査では具体的な仕事内容に応じた日本語能力が求められます。日本人児童・生徒を対象として、英語教育に重点を置いたカリキュラムを実施しているインターナショナルスクールで働く場合、児童や生徒だけではなく、その保護者と接する機会も想定されることから、 日本語能力試験(JLPT)のN3程度、もしくは、より幅広い場面で使用される日本語を理解する能力が求められるとも考えられますので、日本語能力試験(JLPT)のN2程度のレベルが求められる可能性もあります。
まとめ
以上ご紹介したとおり、「教育ビザ」と「技術・人文知識・国際業務ビザ」の区別には特に注意が必要です。基本的な考え方としては、学校教育法に定められた小学校~高等学校・専修学校(専門学校)との契約に基づいて教育に従事する場合に認めらるのが「教育ビザ」で、一般企業との契約に基いて、教育行う業務に従事する場合に認められるのが「技術・人文知識・国際業務ビザ」になります。
➡インターナショナルスクールでの就労に関して言えば、外国籍の児童・生徒を対象とした教育機関で働く場合は「教育ビザ」、日本人児童・生徒を対象とした教育機関で働く場合は「技術・人文知識・国際業務ビザ」に該当するという認識で問題ありません。
実際に「教育ビザ」や「技術・人文知識・国際業務ビザ」を取得する場合、出入国在留管理庁ホームページ上の申請書類以外にも提出が求められる書面が多数ございます。必要な添付書類や、その作成方法に関しまして、ご不明な点があればぜひ当事務所までご相談ください。