【第3回】外国人雇用に活用できる助成金
外国人の方を雇用する際に活用できる助成金について、第3回目となる今回は、職業経験、技能が不足することにより、就職が困難な求職者を試行的に雇用し、早期就職の機会を与える『トライアル雇用』を導入するうえで活用できる助成金のご紹介です。『 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)』です。
・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者と求人企業の相互理解を促進することを通じて、早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としており、外国人労働者にも適用されます。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
最も支給を受けやすく、手続きも比較的簡単な雇用関係助成金になります。特に未経験者での採用についてハローワーク等に求人票を出す場合にはご検討されることをお勧めします。ただし、トライアル助成金の支給を受けると、同じ対象者で、他の雇用関係助成金(正社員化、教育関係の雇用関係助成金等)の支給を受けられなくなる場合もありますので、他の雇用関係助成金との比較検討を慎重に行ったうえで、最も効率の良い助成金申請を検討することが重要になります。
※併給調整について
➡特定求職者雇用開発助成金との併給が可能になりますが、特定求職者雇用開発助成金の第一期分と、トライアル雇用助成金のどちらかを選択することになります。
- 最も支給を受けやすく、手続きも比較的簡単な雇用調整助成金になります。
- 対象従業員が途中で退職した場合でも日割りで支給が可能になり、早ければ2週間ほどで給付されます。
- 原則として、未経験者を正社員として雇用することが前提となります。
- 他の雇用調整助成金との併給調整に留意する必要があります。
- ハローワークに求人も申し込みをする際には、トライアル雇用求人として求人の申し込みを行う必要があります。
概要
(1)トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の特徴
・職業経験や技能・知識等を考慮すると、安定的な就職が困難な求職者について、ハローワーク等の紹介により一定の試用期間をもって雇用を行った事業主に対する助成を行う制度になります。事業主は一定の試用期間の中で、対象となる求職者の適性や業務遂行能力を見極めることが可能になり、事業主(求人者)と求職者との相互理解を促進することを通じ、結果的に求職者の方々の早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。
(a)ハローワークが紹介する対象労働者を短期間(原則として3力月間)試用期間として雇用し、その問に事業主と労働者相互の理解を深め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけ作りを図ります。 |
(b)事業主は、トライアル雇用期間中に対象労働者の適性や業務遂行可能性などを実際に見極めたうえ、本採用の可否を判断することが可能になります。また対象労働者にとっても、企業側の求める適性や能力・技術を実際に把握することができ、トライアル雇用期間を通して、それら能力・技術を習得することで、その後の本採用の道が開かれることになります。 |
受給額
基本的な受給金額は、1力月に4万円で、支給期間は最大3力月で合計12万円の支給になりますが、対象労働者の雇用期間が1カ月に満たない月がある場合には、以下のとおり計算します。
(1)割合支給額(月額)
A=対象労働者が1カ月間に実際に就労した日数/対象労働者が当該1カ月に就労を予定していた日数
A | 割合支給額(月額) |
(a)A≧75% | 4万円 |
(b)75%>A≧50% | 3万円 |
(c)50%>A≧25% | 2万円 |
(d)25%>A≧0% | 1万円 |
(e)A=0% | 不支給 |
若年雇用促進法に基づく認定事業主(ユースエール認定事業主)が、35歳未満の対象労働者に対しトライアル雇用を実施する場合、1人あたりの支給額が最大5万円(最長3力月)となります。
受給のポイント
(1)職業経験や技能・知識等を考慮した場合、安定した職業に就くことが困難な求職者とは、以下のいずれかの要件を満たす者をいいます。
(a)過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している状態にある人であって、今後は長期的に安定した就業を希望する者 |
(b)直近で1年を超えて失業(※)している者 ※ここでいう失業とは、パート・アルバイトなど正社員以外で就労していた場合も含め、一切就労を行っていない状態をいいます。 |
(c)妊娠、出産または育児を理由として離職した者であって、紹介日前において安定した職業に就いていない期間(離職前の期問は含めず)が1年を超えている者 |
(d)紹介日において、55歳未満かつ安定した職業に就いていない者であって、安定所・職業紹介事業者等において次のいずれかに該当する支援を受けている者 (イ)わかものハローワーク等において、より就職困難性が高いと認められる者に対し行われる支援であって、支援開始から支援終了まで同一の担当者が行う支援(マンツーマンによる担当者制)。また、当該担当者は、以下の要件を具備する必要があります。 (ロ)以下のいずれかの個別指導に該当する支援 (ハ)職業紹介事業者等において、個別支援を実施する体制にない場合であって、実質的に上記個別支援と同等の支援であると認められる支援 |
(e)その他、就職の援助を行うにあたって特別の配慮を要する人者。具体的には、母子家庭の母等、父子家庭の父等、生活保護受給者、季節的業務に従事する労働者、中国残留邦人等永住帰国者、日雇労働者、住居喪失不安定就労者、ホームレス、その他トライアル雇用の活用が必要と認められる者 ※出産を機に正社員を退職したが、働く意欲のある女性も対象労働者となりえます。 |
(2)対象労働者をハローワーク・地方運輸局(船員となる場合)・職業紹介事業者(職業安定局長が定める条件に同意し、規定の標識を掲示している者に限る)(以下「ハローワーク等」という)の紹介により雇い入れる必要があります。
(3)原則3力月の期間トライアル雇用をすること。ただし、コロナウイルスによる影響で休業した場合は原則の期間が延長されます。
(4)1週問の所定労働時間が30時間を下回らないこと。ただし、上記(1)(e)の日雇労働者、住居喪失不安定就労者、ホームレスに該当する者をトライアル雇用する場合は1週間の所定労働時間が20時間を下回らないこととなります。
(5)対象者のその他の要件
・トライアル雇用の対象者は以下の要件に該当する必要があります。
(a)ハローワーク等からの紹介日前に、事業主がその対象者を雇用することを約していないこと |
(b)対象者がトライアル雇用を行う事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族(配偶者、または3親等以内の血族および姻族をいう)でないこと |
(c)トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年間に、同じ事業主に雇用されたことがないこと |
(d)トライアル雇川を開始したロの前日から起算して過去3年問に、同じ事業主から職場適応訓練(短期訓練を除く)を受けたことがないこと |
受給できる事業主
・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)を受給できる事業主は、以下の要件に該当す必要があります。
(1)雇用保険適用事業所で、ハローワーク等のトライアル雇用求人に係る紹介により、対象者をトライアル雇用(国、地方公共団体、特定独立行政法人、特定地方独立行政法人から受けている補助金、委託費等から支出した人件費により行ったトライアル雇用を除く)により雇用した事業主 |
(2)トライアル雇用労働者に係る雇用保険被保険者資格取得の届出を行った事業主(65歳以上の労働者を雇い入れた場合を除く) |
(3)トライアル雇用を開始した日の前日から起算して過去3年問に、トライアル雇用を行った事業所において、トライアル雇用を実施した後に常用雇用へ移行しなかった卜ライアル雇用労働者(トライアル雇用労働者本人の都合による離職や本人の責めに帰すべき解雇等は除く)の数に、トライアル雇用結果報告書兼トライアル雇用助成金支給申請書が提出されていない者の数を加えた数が3人を超え、常用雇用へ移行した数を上回っていない事業主 |
(4)基準期間(トライアル雇用を開始した日の前日から起算して6力月前の日からトライアル雇用期問を終了する日までの期問をいう)に、トライアル雇用に係る事業所において、雇用保険被保険者を事業主都合で離職させたことがある事業主以外の事業主 |
(5)基準期問に、トライアル雇用に係る事業所において、特定受給資格者となる離職理由のうち、1Aまたは3Aの理由により離職した者の数を事業所全体の雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている(当該離職者数が3人以下の場合を除く)事業主以外の事業主 |
(6)過去1年問において、対象者を雇用していた事業主と資本的・経済的・組織的関連性等から密接な関係にない事業主であること |
(7)トライアル雇用労働者に対して、トライアル雇用期問中に支払うべき賃金(時間外手当、休日手当等を含む)を支払った事業主であること |
(8)トライアル雇用を行った事業所において、労働基準法に規定する労働者名簿、賃金台帳等を整備・保管している事業主であること |
(10)高年齢者雇用確保措置を講じていないことにより、高年齢者等の雇用の安定に関する法律第10条2項に基づき、当該確保措置を講ずべきことの勧告を受けていない事業主であること |
(9)ハローワーク、職業紹介事業者等からの紹介時と異なる労働条件によりトライアルを行い、トライアル雇用労働者に対し労働条件に関する不利益または違法行為があった事業主以外の事業主であること |
(11)対象者のうち季節的業務に従事する労働者に係るトライアル雇用を行った事業主にあっては、指定地域に所在する事業所において、指定業種以外の事業を行う事業主であること |
(12)助成金の支給または不支給の決定に係る審査に必要な書類等を整備、保管し、管轄労働局長の求めに応じ提出または提示する、管轄労働局の実地調査に協力する等、審査に協力する事業主であること |
(13)過去5年問において雇用保険二事業の助成金等について不正受給の処分を受けていない事業主であること |
(14)支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度における労働保険料に滞納がない事業主であること |
(15)支給申請日の前日から起算して過去1年間に労働関係法令違反により送検処分を受けていない事業主であること |
(16)風俗営業等を行う目的とする事業所でないこと |
(17)反社会的勢力と関係を有する事業主でないこと |
(18)支給申請日または支給決定日の時点で倒産していないこと |
(19)国、地方公共団体、特定独立行政法人、特定地方独立行政法人以外の事業主であること |
(20)併給調整の対象となる助成金の支給を受けていない事業主であること |
原則求人数を超えたトライアル雇用対象者の紹介や、求人数を超えたトライアル雇用を行うことはできません。また、トライアル雇用対象者の選考については、書類選考ではなく、面接での選考を行う必要があります。
受給手続き
(1)受給手続きの大まかなながれ
(a)対象労働者をトライアル履用する事業主は、常用雇用への移行の促進を図る観点から、トライアル雇用中に講じる措置、常用雇用への移行のための要件等に関する『卜ライアル雇用実施計画書』を雇入れから2週問以内に、対象労働者と十分に話し合いを行い、その合意を得たうえで対象労働者を紹介したハローワーク等に提出することになります。
(b)対象労働者をトライアル履用する事業主は、常用雇用への移行の促進を図る観点から、トライアル雇用中に講じる措置、常用雇用への移行のための要件等に関する『卜ライアル雇用実施計画書』を雇入れから2週問以内に、対象労働者と十分に話し合いを行い、その合意を得たうえで対象労働者を紹介したハローワーク等に提出することになります。このトライアル雇用実施計画書には、以下の添付書類を添付します。
(イ)トライアル雇用期間に係る雇入れ通知書または雇用契約書等労働条件が確認できる書類 |
(ロ)トライアル雇用職業紹介証明書 |
(ハ)トライアル履用に係る求人票 |
(ニ)対象労働者確認票および対象者であることの確認書類 |
(ホ)対象労働者が母子家庭の母等または父子家庭の父であることの確認書類 |
(ロ)~(二)までの書類は、職業紹介事業者の紹介によりトライアル雇用を開始する場合のみ必要となります。なお、その場合(ロ)~(二)までの書類はすべて紹介を受けた職業紹介事業者より交付されます。また、(ホ)の添付書類は、対象者が母子家庭の母等、または父子家庭の父に該当する場合のみ提出します。
(c)コロナウイルスによる休業を行い、トライアル雇用の期間が延長される場合は、変更届の提出が必要になります。
(d)トライアル雇用が終了したとき、またはトライアル雇用期間中に常用雇用に移行した場合は、それから2力月以内に事業所を管轄するハローワーク等に『トライアル雇用結果報告書 兼 トライアル雇用助成金支給申請書』を提出します。支給中請書にはトライアル雇用実施計画書の写しや、出勤簿等、賃金台帳、雇用契約書とともに、トライアル雇用期間勤務予定表等を添付します。支給申請書を提出する場合、(イ)~(ト)までの書類を添付します。
(イ)トライアル雇用実施計画書(ハローワーク、地方運輸局または労働局の受理印のあるもの)の写し |
(ロ)トライアル雇用労働者に係る出勤簿等トライアル雇用期間中の出勤状況が確認できる書類またはその写し |
(ハ)トライアル雇用労働者に対してトライアル雇用期間中に支払うべき賃金について支払ったことが確認できる賃金台帳またはその写し |
(二)トライアル雇用労働者のトライアル雇用期問に係る雇用契約書もしくは雇入れ通知書等トライアル雇用期問中の労働契約について確認できる書類またはその写し |
(ホ)トライアル雇用労働者が常用雇用へ移行した後の期問に係る雇用契約書もしくは雇入れ通知書等当該労働者の常用雇用移行後の労働契約について確認できる書類またはその写し(トライアル雇用労働者がトライアル雇用期間後に常用雇用へ移行した場合に限る) |
(へ)若者雇用促進法に基づく認定事業主に係る基準適合事業主認定通知書および基準適合事業主認定申請書の写し(若者雇用促進法に基づく認定事業主がトライアル雇用(開始した日に対象者が35歳未満であるものに限る)を実施する場合) |
(ト)その他支給要件を確認するにあたって管轄労働局長が必要と認める書類 |
担当当局
・支給申請を行う事業主事業所の所轄ハローワーク助成金担当窓口
最も支給を受けやすく、手続きも比較的簡単な助成金になりますが、トライアル助成金の支給を受けると、同じ対象者で他の雇用関係助成金の支給を受けられなくなる場合もあり、他の助成金との比較検討を慎重に行う必要があります。支給申請手続きに関し、ご不明な点があれば是非当事務所までお気軽にお問い合わせください!